30A契約の一般家庭で200V半自動溶接機を使う

  

 

一般的な住宅(マンション)で200V半自動溶接機(家庭用ポータブル溶接機)を使うレポートです

溶接経験はゼロでしたが、オートバイの改造で自由に溶接ができないと先に進めない場面が多くなってきたので、思い切って溶接を始めました。溶接は機材と環境を揃えればあとはとにかく練習あるのみで、上手くなるためには数をこなすしかないと思います。

自分に合った溶接機を選ぶ

(1)100Vか200Vか?

 一般家庭の電源は100Vなので、家庭で溶接するには100Vの溶接機になってしまうと考えてる方が多いようですが、実は200Vの溶接機が普通に使えます。(分電盤の配線を組み替えれば100V→200Vにすることができる) 溶接機は当然100Vより200Vの方がパワーがありますから、初心者でも簡単に母材を溶かすことができる200V溶接機のほうが絶対に良いです。

 

電圧100V・定格電流15Aのポータブル溶接機のメリット

1、家庭用コンセント(15Aまでの普通のコンセント)に差し込めば、すぐに溶接できる。

2、家庭用コンセントさえあればどこでも溶接できる。(職場・野外などでも手軽に溶接ができ、まさにポータブル)

3、100V・15Aアーク棒溶接機ならばホームセンターで一万円程度で扱っている。

デメリット

1、とにかくパワーがない。(鉄板だと3mm、SUSだと1.0mm厚程度が限界) 私が溶接したかったNinja250RのエキパイはSUS1.6mmなので、100V溶接機は選択から外れました。

2、家庭用コンセントでそのまま使える半自動溶接機は非常に高価。(スズキッドのアーキュリー80ルナ2など) 中国製の安価な100V半自動溶接機は定格が25Aなので、家庭用コンセントでフルパワーで使用するとブレーカーが落ちると思われます。

 

電圧200V・定格電流30Aまでのポータブル溶接機のメリット

1、パワーは充分、鉄板7mm・SUS板2mmくらいなら溶接可能なのでホビー用途ならば何の不足もないと思います。(※素人作業ということをわきまえ、鉄骨やフェンスなどの建築物やバイクのフレームなど充分な強度が確保されなければ重大な事故につながるものは、こういったホビー用溶接機で溶接するべきではありません)

2、種類が多く安価。200Vは一般的な動力電源の電圧なので溶接機では一番ポピュラーになり、中国製のMIGシリーズなどの安い製品が数多く出回っています。

デメリット

1、分電盤の回路を200Vに組み換え、溶接機の性能に応じたブレーカー・VVFケーブル・コンセント・コンセントプラグを揃えて取り付ける必要がある。(本体を入手してもそのまま使用することができない)

2、200V電源はそこらにあるわけではないので、ポータブルとは言っても事実上ポータブルではない。

 

(2)アーク棒溶接機か半自動溶接機か?

 初心者ならば断然半自動溶接機だと思います。(狙った場所でトリガーを引けば誰でも簡単にアークが発生して母材が溶けます) ただし、十分な強度で綺麗なビードで仕上げるには何度も練習が必要です。半自動とはいっても、トーチを動かす速さとセッティング(母材の素材・厚みに対しての電流の強さとワイヤーの送りスピード)のバランスによって出来栄えが全然違ってくるので、いろいろ試して経験してみないと感覚が掴めないと思います。

 

(3)半自動ならばガスかノンガスか?

 ガスは価格・設備的にホビーではありません。よってノンガスワイヤーを使ったタイプになると思います。

 まとめると、初心者に向いている溶接機単相200Vのノンガス半自動溶接機ということになると思います。

 

溶接機のスペックから定格電流を調べ、適合するブレーカーやコンセントを選ぶ

 一般家庭の30A契約ならば、必要とする最大電流(定格電流)が30A以下の溶接機になります。(でないとブレーカーが落ちます) 定格電流を調べるには溶接機のスペックを見て計算します。

 スペックにある入力容量(定格入力と書いてあることもある)のKVAの値を見ます。例えば100V・2.5KVAの溶接機ならば、2500VA÷100V=25Aになり、30Aのブレーカーと125V・30A規格のコンセント・ケーブルが必要になります。(家庭用コンセント125V15Aはもちろん、天井に近いところに設置してあるエアコン用125V・20Aコンセントでもブレーカーが落ちます) またその場合25Aの電力を使用しますから、30A契約だと5Aしか余裕がないため、テレビやパソコンは当然、部屋の照明を全部落としてから作業しないと30Aのメインブレーカーが落ちる可能性があります。

 スペックが200V・3.6KVAならば3600VA÷200V=18Aとなり、20A以上30A以下のブレーカーと250V・20A規格以上のコンセント・ケーブルが必要になります。(30A契約でも12A余裕があるので、照明やパソコン程度ならつけっ放しにしてもOK)

 

導入した溶接機と備品・消耗品

導入した単相200Vのノンガス半自動溶接機

 

 スペックは単相200V・入力容量3.6KVAで定格18Aです。もしかしたら、この溶接機(中国製MIG130)が一番安く入手できる溶接機かも知れません。私のときはライバルが少なかったので8000円くらいで落札できました。

 

 付属しているものは、0.9mmノンガススチール用ワイヤ0.8kg、チッピングハンマー付きブラシ、チープな溶接面です。

 

 

200V回路の組み換え(最初に重要なことが書いてあるのでコメントはしません。)

 

 

左:30Aの2P2E安全ブレーカー(831円) 中央:250V30Aコンセントプラグ(1302円) 右:250V30Aコンセント(1223円)

 溶接機のスペックから20Aでも良いと思いますが、一応30A対応でまとめました。

2.6mm2線のVVFケーブル7M(2306円)

 250V・30Aに対応するケーブルです。絶対にケチって100V用のコードを使用してはいけません。(たぶん燃えます)

 溶接機を使用するときだけ30Aブレーカーに接続し、5M先にあるベランダに250V30Aコンセントを設置します。

 

 

 30Aブレーカーを分電盤の空きスペースに設置し、VVFケーブルを接続しました。

250V・30Aのコンセントプラグを溶接機に取り付けました。

 

 

 VVFケーブルに250V30Aコンセントを取り付けてベランダに設置しました。この溶接機は動力の3相200Vでもそのまま使えるということなので溶接機側のプラグは3線接続していますが、コンセント側は単相なのでアースは接続せず2線のままです。(いいのか?) これで溶接機が使えます。

揃えた装備品

左:溶接用革手袋(383円)

中央:自動遮光面溶接マスク(3000円)

右:溶接エプロン(2069円)

 

 

スチール用ノンガスワイヤ(2610円)

ストレートやアストロプロダクツで買えば安価です。

ステンレス用ノンガスワイヤ(7200円!)

 ステンレスのノンガスワイヤはスズキッド製しかなく、めちゃくちゃ高価!!

 

機材をベランダに移動

総重量は17.3kgです。

溶接作業台(?)と養生

 ベランダの床が樹脂なので、ベニヤ板の囲いとタイルで養生しました。スパッタ(火花の正体である真っ赤に焼けた金属の粒)は想像以上に遠くまで飛び散るので、樹脂の床だと念入りに養生しないと大変なことになります。側溝に使われる蓋は、アースクリップを取り付けることができない母材(一枚板)を溶接するときに使います。

 

 

出力とワイヤーの送りスピード調整

 うまく溶接できるかどうかはこの調整にかかっています。アークさえ出れば、調整がいい加減でも汚いながらもくっついてしまうため、何がベストなんだかがわからないのです。私はスパッタの状態、アーク音(バチバチ音)の質・大きさで感覚が掴めるようになるまでワイヤ1巻くらい使いました。

 最初は点を付ける練習をしました(青で囲った部分)。狙ったところに同じ大きさの点をひたすら付けて行きます。電流の強さとワイヤスピードで出来栄えが全然違ってくるのでこれがなかなか難しい・・・ 赤で囲んだ部分は点の間隔を狭めて1本の線にしてみたところです。細かい点々がスパッタで、これが多いときは電流が強すぎです。

 

 

 次は左から右へトーチを移動して一定幅のビードを付ける練習をひたすらやりました。これも電流によって出来栄えが違ってくるので難しい・・・ワイヤスピードを5にしてトーチの移動を一定で動かしたときのビードの違いです。この3mmの鉄板では電流MIN2orMAX1がいい感じでした。

 出力電流は マニュアルのスペック表では50〜120Aとなっているので、それぞれのスイッチの電流は以下のようになると推測されます。

MIN1/50A  MINI2/80A  MAX1/100A  MAX2/120A

 

 次は実際に板を接着する練習をしました。これは3mm厚のステーです。反対側の面は開先加工といって、合わせ面のカドをディスクグラインダーで軽く削りV字の谷のような形状にしています。

 2箇所を点付けしました。焦げているのはメッキを落としてないからです。

 

 ひっくり返しました。溶接する場所はV字の谷になっています。

 溶接しました。テキトーです。

 

 連続した点付けです。

 こちらはもう少し厚い板(5mm)です。

 

 次は90度の角度で板の接着にチャレンジ

 いきなり難易度が上がりました。突き合せより電流・ワイヤスピード両方とも多くする必要があるようです。

 

 実際に溶接したもの 

 バイクのエキパイ(SUS1.6mm) 切断したパイプをつなぎ合わせました。

 バイクのエンジンブラケット(鉄2mm)

 他車のイグニッションコイルを取り付けるためのマウントを溶接

 

 バイクのサイレンサーボディ裏面に3mm厚のステーを溶接

 これもエンジンブラケット

 他車のラジエーターをマウントするステーを溶接

 

ヤフオク200V半自動溶接機のワイヤ交換

この半自動溶接機のワイヤー交換の手順です。 

ワイヤがセットされてない状態

 セットできるワイヤは0.8mmか0.9mmで、ここに入らない直径の大きいボビンは使えません。(当然ですが)

 ワイヤ(ボビン)を設置し(左回転なので向きに注意)、ワイヤーがバラけないように手で押さえながら(ワイヤはキツく巻いてあるので常時押さえてないとバラけます)、ワイヤ先端をストローのような白い筒に挿入していきます。

 

 

 白い筒から出てきたワイヤ先端をもう少し押し込みます。ローラーの横を通過させ、その先のにある赤い筒にワイヤ先端を1cm程度入れます。このローラーがワイヤを駆動しています。

 その状態でローラーの付いたガイドを締めてワイヤをローラーで挟み込んだら、レバーを下げてつまみを軽く締め込んで固定します。これでもうワイヤがバラけることはありません。

 

 

手に持っているボビン押さえ(名称不明)を被せます。

スプリングを置いてナットを締めればワイヤ設置終了

 

 

ノズルのコレクトチップを取り外してトーチのボタンを押すとワイヤが送られてきます。

 

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